近くて遠い、大塚さんという人のこと
大塚幸代さんのお通夜に参列した。
弔問客も多く、よいお通夜だったと思う。
すごく親密というわけではなかったけど、10年以上も記事を読んでいて、いつの時代も変わらず興味のあるライターさんだった。
追悼文などという大げさなものではないけど、思い出の備忘録として書いておく。
打ち合わせ→ほそいあやたんと飲酒→某編集者とお茶で帰宅なう。普段人とほとんど会わないから、いろいろ話せた1日でした。もっと人と遊ぼうっと。
— 大塚幸代 (@yukiyoo) 2012, 12月 11
"ほそいあやたん"に爆笑してしまったのだけど。
それから彼氏さんも交えて何度か飲むようになって、だんだん解ってきたことは、生身の彼女からは、記事で感じるようなネガティブオーラ(失礼)はひとつも感じないということだった。
今風にいうと「こじらせ女子」的な文章が芸風なのか本性なのか、そんなことはどうでもいいけれど、素直で常識的で明るくて楽しいキャラなんだなと思ったのと、あの独特な文章がこの人から紡がれているのなら大賛成だ……と(上手くいえないけど)思った。
食べるということは生きること、とよく言いますが、私は生き方を知りたい。
いつか普通に、いつか健康に、それが私の目標です。
chikyu-no-cocolo.cocolog-nifty.com
特徴でもある自分を見つめる文章が、最近は冷静というか客観的になってきて、同時にとても前向きに締め括られているのをみて、いち読者として密かにちょっと安心したりもした。
昨年、「千葉のおきて」という本を書いた時、大塚さんは「埼玉のおきて」の担当だったので、そのつながりから話す回数も増えて、プチ打ち上げと称して飲みに行って、ケンミンショーや月曜から夜ふかしのような地元あるある話をした。千葉と埼玉はライバル関係。お互いの県をディスりながら原稿を進めたりしているうちに、かえって埼玉(千葉)について詳しくなってしまって不本意、みたいな話をした覚えがある。
私は県同士が不毛な争いをする構図が好きで、とくに自分は千葉県民なので埼玉の人とはとりあえず挨拶代わりにやり合う。大塚さんは「別に敵とも思ってないし…」という原稿の通り、実際もそんな白けた態度だったのが面白かった。ここぞとばかりに海に対する憧れを指摘する千葉県民、ウザかったろうな。
大塚さんはこのへんから足しげく埼玉に通い、うどん食べ歩きの記事などを書きはじめ、並々ならぬバイタリティを見せていた。「地元に住んでいた頃は早く抜け出したいと思っていたし、特に思い入れはない」などといいながら、ちゃんと埼玉愛があったんだなーと思った。
高円寺の馬力で飲んだ時、彼女がコートにつけていた真っ赤なプラスチックのインベーダーのブローチに興味を示したら「黄色も持ってるんであげます」といってプツリと外して、差し出した。大塚さんはキッチュでポップな物が大好きだったし、それを気軽にくれたりするのも少女っぽい。女子高生のようなふるまいにも、違和感がない不思議さがあった。
私もどちらかというとチープな物が好きで、年相応じゃないと周囲から文句をいわれたりするけど、いいじゃん別にというスタンスを通している。ブランド物の収集癖があるよりはよっぽどいいし。と開き直っているクチだ。
同じ匂いを感じてくれたのか、原宿で激安アクセや雑貨を買い漁る会に誘ってくれた。
さすがに同年代の友達とこういう買い物をする機会はなく、いつも一人で巡っているので、この日はすごく楽しかった。
昨年の秋、ベトナム関連の飲み会に来ませんかとメールをもらったのだけど、先約がある旨を返信した。「残念、また今度!」のメールが最後になった。
私が知っている彼女の素顔は、ほんの一部にすぎない。
ただ、幸いにも長期にわたって物を書く仕事をしていた人で、膨大な文章をのこしてくれている。
読んでいると、まだ居るような感じがするので、これからも読み返していこうと思う。